子育て世帯の家探しは賃貸優先くらいが丁度いい

ネットでさんざん目にする「賃貸vs持ち家論争」。子の出生をきっかけに自分も考えるようになった。さまざまな情報にあたった結果、なんとなく自分なりの考えがまとまった気がしてきたこの頃。言語化してみようと執筆を試みる。

この住宅問題の永遠のテーマは、「きのこvsたけのこ」みたいなもので、結局は各派閥の好み。だからこそ、論争としてネットを盛り上げている。買わせたい不動産関係者のポジショントークも多いのも否めないし、情報が多い分、真に受けずに「へぇー」というスタンスで読み取るべきだろう。自分は「賃貸派」なので、賃貸寄りの論調として読んでもらえれば幸いだ。専門家でも何でもない一個人の頭の中なので悪しからず。

住宅ローンは結局借金。長期間の複利は恐ろしい

まず、一般的な子育て世帯を想定すれば、何千万という人生最大の買い物=住宅をキャッシュ一括で買えるケースはほぼあり得ない。となると、住宅ローンを組むことになる。「借金」と言えば、普通はネガティブなイメージを抱くし、海外旅行のため、高級バッグ欲しいから、とキャッシング使ったりすれば、「いや貯めてからにしろよ」と思うであろう。しかし、こと住宅に関しては、当たり前のようにローンを組む。比較的低金利であったり、税控除があることもあって、一般家庭が普通に利用する風潮があるが、借金は借金だ。

自分は大学時代、無利子と有利子の奨学金を併用して貸与した。前者は細々と返済を続けていて、後者はなる早で一括返済した。利子はただ貸し手の利益になるものだし、それを払い続けることにストレスを感じる。

試しに、一般財団法人住宅金融普及協会のHPで、住宅ローンの支払い総額シミュレーションができるので、「借入4500万、元利均等、固定金利1.5%、35年」で調べてみると、月々13万3,182円の返済、利息含む総返済額は5786万8859円(利子は1286万8859円)だった。アインシュタインが人類最大の発明といった複利によって、借入額が多ければ多いほど、返済年数が長ければ長いほど、雪だるま式に返済額は増えていく。この借金への恐怖感が、持ち家への抵抗感につながる。

毎日帰る場所が投資商品になるのは嫌だ

ただ、住宅ローンが、少ない元手で大きな資産を得る機会を提供しているのも事実。「資産価値が落ちない家を選べ」と持ち家派の人は声高に叫ぶ。

ここでちょっと、賃貸と持ち家のコスト比較をしてみる。どちらも24年という期間で算出する(結婚や出産のタイミング~子ども全員独立を想定)。

賃貸なら月々の家賃と2年に1回の更新費がランニングコストとしてかかっていく。家賃は経年によって下落するかもしれないけど、ここでは落ちないと仮定して、家賃・管理費の12万円を支払い続ける。更新費は12万円とすれば、24年間の住居費は3600万円となる。

一方、4000万のマンションを買った場合どうだろう。購入時の諸費用に500万、物件に対しては頭金500万、残り3500万は元利均等の固定金利1.5%/24年でローンを組む。修繕積立費1.5万、管理費1.5万の計3万円が月々にかかり、固定資産税が年14万かかるとする(24年でトータル1200万円)。ローン返済は、月々14万4787円の返済、利息含む総返済額は4169万8821円(利子は669万8821円)、住宅ローン控除で150万程度戻ってくると仮定する。この場合、24年間でかかるのは、住宅価格4000万、その他のランニングコストは2369万8821円となる。

もし24年後、物件の価値が全く変わらず、4000万で売れたとすれば、単純にランニングコストの比較になるので、賃貸よりも持ち家の方が約1200万円お得だったと言える。今度は、物件価値の下落率がおよそ年2%ペースで、24年経って2080万で売れたとする。こうなると、ランニングコストに加えて1920万円払ったことになるので、今度は賃貸の方が700万弱お得。皮算用でもシミュレーションを自分なりにやってみると、損益分岐点が見えてくる(よく見るものではあるけれど、自分で計算することに意味がある)。

何が言いたいかというと、こういう計算して資産価値の下落におびえながら暮らすのって精神衛生上よくないということ。賃貸よりも持ち家の方が、一定期間における住居費用が見えにくい。どんなに資産価値を維持できそうな物件を購入したって、数十年先の世の中に何が起こるかわからない。下落リスクは常に潜んでいる。

高額物件であればあるほど、損得の幅は大きくなる。安住の地を求めて手に入れるはずのマイホームが、ハイリスク投資の対象になるのはつらい事実だ。その事実は耐え難いし、暮らしの拠点である住宅に対しては、資産価値よりも利用価値で評価し、シンプルに価値に見合ったコストを払いたい。

「マイホームは投資商品ではなく消費財」と声を大にして言いたい。逆に言えば、下落幅の最大値を許容できるなら、持ち家という選択肢も現実的なのかなと思う。

老後対策は複利を味方にした資産運用で実現する

また、家を所有する理由に「老後は家を借りにくくなるから」というものもある。これに対しては、「もっと老後が近くなってから考えるべき」だと思う。

①独身期(自分が親元を離れる~結婚)②夫婦期(結婚~出産)③子育て期(出産~子の独立)④老後期(子の独立~)という4つのライフステージで世帯人数が変化し、広さや立地など、最適な家も変わってくるというのは想像しやすい。仮に、ある人が30、32歳の時に出産し、最初の出産時に家を購入。子どもはそれぞれ大学卒業後に独立するとすれば、54歳には2人世帯に戻る。その後80歳まで生きるとすれば、③子育て期は24年、④老後期は26年だ。

老後は長い。子育て期のはじまりに家を買ったとすれば、その家に住む期間の折り返し地点で老後を迎えるとも解釈できる。老後まで見据えた住宅を子育て期に入手するのは無理があるのでは、というのが個人的な主張。であれば、近くなってから、時勢や自分たちの都合も踏まえて「終の住処」を検討した方がいいのではと考える。

入手コストの側面でも、持ち家の取得を先延ばしにする意味はある。なぜなら、手元資金を増やしておくことで、多額の住宅ローンを回避できるからだ。子育ての時期は一般的に働き盛りであるので、その間は家賃補助を得ながら賃貸に住み、稼ぎ、貯める・運用するといったことができれば、子どもが独立したタイミングでは、ある程度の資金が用意できるはず。

長期の住宅ローンでは手強い敵になる複利も、このケースでは心強い味方だ。例えば、上述でシミュレーション比較したケースでマンションを買わずに賃貸に住みながら資産運用したとする。頭金の予定だった500万を元手に毎月5万円を24年間積み立てていく。貯金と積立NISAなどをミックスしたミドルリターン投資で年利3%で運用するとしよう。

そうすると、元金+積み立ての金額が1940万、利息が1175万5296円。24年後には、3115万5296円になっている計算だ。終の棲家ならファミリータイプよりも小さな家で済むなど、低予算にできる材料もあるため、一括での住宅購入も視野に入るだろう。

もちろん、確実に増やせる保証もなければ、24年先の不動産価格どうなっているかもわからない。でも、複利を味方につける発想は大事にすべきだ。

本質を見誤らないためにも賃貸派に軸足を置くべき?

ここまでも賃貸寄りの論調で考えを述べてきたが、自分が賃貸派でいる理由に「賃貸vs持ち家論争に対して中立でいたいから」というのもある。意味がわからないと受け取られると思うが、最後にこの理由を説明したい。

賃貸vs持ち家論争は、単純な住宅の利用形態の比較ではない。問題を複雑にしているのは、「賃貸と購入で、市場に出ている物件の性質や在庫数が異なる」ということ。中古の分譲マンションなどでは、借りられる部屋と買える部屋が同時に出ていることもあり、その場合は比較しやすい。でも、そのケースは稀。戸建ての賃貸は滅多になかったり、賃貸アパートと分譲マンションでは概して構造や共用部に違いもあったり、3LDK以上になると賃貸物件が少ないといった現実がある。

そういった事情を理解しつつ、単純化して言えば、賃貸物件は「シンプルに家の基本機能を満たすもの」、購入物件は、注文or分譲、戸建てorマンションで程度の差こそあれ「こだわりを実現できるもの」だと思う。ニーズを満たすために利用の対価を払っていく賃貸に対して、ウォンツをも満たす持ち家は贅沢品だ。

大げさに言えば、賃貸派と持ち家派というのは生き方の話。現実主義の前者と理想主義の後者という様相を呈している。だからこそ深みのある話題になるのだが、両者の袂を分かつのは「勘定」ではなく、「感情」の側面なのではないか。表面上は冷静に数字を出していても、結局はシミュレーションなので楽観的なのか悲観的なのかは感情の問題だ。

また、所有すること自体の感情的価値も根強い。「夢のマイホーム」という言葉に象徴されるように、長年に渡って日本人に植え付けられた精神とも言える。その強い感情に支配されないためにも、むしろ「賃貸でもいい」というスタンスに立つくらいが賢明だと考えており、それが「中立のために賃貸派にいる」ということだ。

大事なのは健全な意思決定プロセス

多くの人にとって大事なのは「どっち派なのか」ではなく、健全なプロセスで家選びをするということ。SUUMOやHOMESのサイトをみると、まず「新築戸建て」「中古戸建」「新築マンション」「中古マンション」といったメニューがあって、探す対象を選んだ後、条件を入れていくUIになっている。そんなこともあって勘違いしてしまうのだが、「借りるか」「買うか」というのを入口にすべきではない。

まずは「どんな家でどんな生活を送りたいか」を明確にすべきだ。その想いに寄り添い、エリアや沿線、駅との距離、周辺施設・雰囲気といった土地、戸建てか集合住宅か、間取り、素材といった建物について、「条件」をリストアップ。条件を定義できたら、賃貸と購入に関わらず具体的な物件をなるべく多くチェック。そして、必要性に応じて条件を取捨選択し、同時に予算の相場感を得る。

このプロセスを何度も行き来することで、納得のいく選択に近づき、賃貸であれ持ち家であれ、後悔のない物件に出会える。もちろんお金の問題は大事だけれど、最初に考慮すべきは、自分や家族がどんな生活を送りたいか。それを細かく条件に落とし込んでいくということだ。

家探しは、感情と勘定を天秤にかける行為なのだと思う。繰り返しになるが、「所有による満足感・安心感」という感情が重くなりがちな分、前もって賃貸派に肩入れしておくくらいが、「住宅ローンリスク」という重りでスタート時点の天秤のバランスをとることができ、本質的な住宅検討ができるというのが私見だ。「賃貸か持ち家か」の論争はそれ自体が面白いし、住宅を検討する際の心構えとしても自分事で必ず考えておくテーマだと感じた次第である。

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