青春18きっぷの楽しみ方。お手頃に味わう強烈な非日常

本記事の目的・背景

私は、JRが発売している青春18きっぷを利用して旅に出るのが趣味なのですが、そんな趣味の何がいいのか、言語化してまとめてみることにしました。

青春18きっぷとは

JRが春・夏・冬に期間限定で発売する特別な切符です。内容は「JR全線の普通列車乗り放題」「価格は5回分で1万2050円(税込)」というもの。シンプル、そして何より安い。5回分で1枚になっているのですが、1人で5日分使っても、5人で1日分使っても、1人で3日、2人で1日でもOK。利用期間の中盤になると、半端に使った切符が金券ショップに出回ったりもします。

●●放題サービスの究極

1日2410円でJR鈍行乗り放題のこの切符がどれだけお得か、分かりやすい例を挙げてみましょう。東京から栃木の宇都宮に餃子を食べに行くとします。東京駅から宇都宮駅は、JR宇都宮線の鈍行で行くと、所要時間2時間弱で、片道1980円、往復では3960円です。新幹線では、片道4490円、往復8980円もかかりますが、東京から宇都宮であれば50分程度で着いてしまい、鈍行より1時間も早いです。しかし、この1時間、往復で2時間に18きっぷとの差額分の価値はあるのでしょうか。読書でもしていれば、あっという間に過ぎると思いますし、約6500円の差額は美味しい餃子、お酒、お土産にとっておけばいいと思います。

加えて、JR乗り放題という武器を活かして、「とりあえず餃子は食べたけど、まだ時間あるし日光いってみるか(宇都宮からJR日光線)」「帰りに佐野ラーメンも食っていくか(小山で途中下車、両毛線に乗り換えて佐野)」みたいなことができるのも、18きっぷの面白さです。もし、これが新幹線を使った場合、追加で料金がかかってしまうのが障壁となり、目的地で目的を果たすことだけで終わってしまいます。

音楽や映画に代表されるサブスクサービスの醍醐味は、作品を経験する障壁が下がることだと思います。聞き放題だから普段聞かないアーティストの曲も聞いてみよう、見放題だからこの作品も見てみよう、ということが起こり、偶然の出会いにつながるといったこともあるでしょう。これと同じことが、JR全線乗り放題の18きっぷにも言えて、その扱う範囲の広さ&お得さ(全国という物理的な距離&価格的メリット)では、究極の乗り放題サービスなのです。ちなみに、鉄道のサブスク(定額●●放題)と言えば、身近なのは定期券ですが、「定期圏内で普段降りない駅に意味もなく下車してぶらぶらしてみる」といった遊びも面白いですよ(たまにやってました)。

激安が導く手段の目的化

「手段の目的化」というと何かネガティブな印象がありますが、18きっぷの素晴らしさをたたえる誉め言葉として、これほどぴったりの言葉はない気がします。鉄道を単なる移動手段として捉えるのであれば、スピードが速いにこしたことはありません。それなら新幹線や飛行機でいいわけです。ただ、何をそんなに急ぐ必要があるのでしょうか。日本全国に新幹線や高速道路、飛行機網が張り巡らされていることで、今は高速移動が可能になっています。それによる物流スピードの向上などは素晴らしいものですが、旅客に関して言えば、旅先に向かうワクワク感や、「途中」を楽しむ精神が移動時間の減少とともに損なわれている気もします。また、ビジネスシーンでも、例えば東京からの福岡市内出張は、飛行機でのアクセスが良すぎて、日帰りで十分いける状況です。1泊できれば仕事の後もたっぷり楽しめるのに何てことも思ったりします(実体験です)。

何が言いたいかというと、「目的地でやるべきことを果たすためになるべく最速で移動する」という交通における発想が、何か「せかせか」しているような気がするのです。ノスタルジーなのか、何なのか、もっとのんびりいきたいよね、と。それを体現しているのが青春18きっぷ。知らない人に対して、この切符の名前を出すと、まっさきに「大人でも使えるの?」と聞かれるのですが、答えはイエス。「若者の旅をイメージした(けど全年齢対象)」という名前の由来通り、ゆっくり車窓を眺めて旅情に浸る、という青春を味合わせてくれて、移動という手段に意味付けしてくれるのが、青春18きっぷなのです。まさに「早く着きたい」という移動への考え方を否定し、「ゆっくり沿線も味わいながら行こう」と移動自体も目的にしてくれるのです。鈍行ならではの小刻みな乗り継ぎ、通学する学生等その土地に住む乗降客などが、「ここで結構降りるけど、栄えている駅なのかな」「こんな史跡があるのか、今度行こうかな」「方言での会話が聞こえるけど素敵な響きだな」と、新たな発見につながり、旅を味わうものに変わります。もちろん鈍行でなくてもそうしたものはありますが、たっぷり時間をかける分、エンカウント率も高いはず。高速道路においても休憩用の通過地点としてのイメージが強いサービスエリア自体が目的地になる現象も近年起きていますが、青春18きっぷも「旅の途中」にスポットを当ててくれるアイテムなのです。

思考停止に、1万円と2千円で買える非日常を

テレビや雑誌、インターネットを見ていて、「ここ行ってみたい!」「これ食べたい!」と思うことはたまーにありますが、「じゃあ行ってみよう」と思えるエネルギーも年を重ねるにつれて少なくなってきました。私個人の話ですが、旅先を決めることには思考停止状態にある気がします。ただ、漠然と旅に出たいなーと思うことは多いです。要は、非日常を味わいたいのです。そんな夢の旅に誘ってくれるのが青春18きっぷ。ここ数年は「●●に行きたいなー。●●線も乗れるし、時間つくって鈍行で行こう。18きっぷ買おう」ではなく、「とりあえず18きっぷ使おう!で、どこ行こう?」という感じになっています。これも手段の目的化です。

旅という強烈な非日常体験を1万2千円で叶えてくれるのは非常にコスパがいい気がします。厳密には宿代なども発生するのですが、安いビジネスホテルなどを駆使することもできますし、鉄道オンリーでは厳しい遠い場所に行きたいのであれば、往路や復路のみ飛行機を使ってワープという方法も。18きっぷユーザーに厳しい状況として、最近第3セクター化や廃線などで少しずつ18きっぷの利用範囲が減っているということがありますが、うまく他の交通手段も組み合わせながら旅のプランを構築しています。本数の少ないローカル線の時刻や少ない予算と戦いながら、旅程を組んでいる時が至福の時です。具体的な旅の内容については、本ブログでも旅行記を残しているものがあるので、そちらのリンクを貼ります。本記事が、18きっぷに興味を持っている方々の参考になれば幸いです!

青春18きっぷで行く。アクションカメラのある鉄道四国一周旅
ざっくり紀行。毎年恒例18きっぷ旅、島根・出雲大社編
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